「古着屋を開業したい」 そう思って情報を集めていると、必ずと言っていいほど、こんな言葉が目に飛び込んできませんか?
「古着屋は儲からないから、やめとけ」
SNSやブログで語られる、あまりにもストレートな言葉に、あなたの希望や情熱が、少しだけ不安に変わってしまったかもしれません。
結論から言うと、その言葉は半分本当で、半分は嘘です。
この記事は、「儲かる/儲からない」といった表面的な話に終始するものではありません。 なぜ「儲からない」という言葉がこれほど広まっているのか、その背景にある市場データや多くの事業者のリアルな声を元に、その本質を解き明かしていきます。
そして、その上で、4兆円規模への成長が見込まれるこの魅力的な市場で、あなたが成功を掴むための具体的な戦略を提示します。
この記事を読み終える頃には、あなたは「儲からない」という言葉を、単なるネガティブな情報としてではなく、成功への道筋を示す「道標」として、力強く捉え直すことができるようになっているはずです。
なぜ「古着屋は儲からない」という言葉が広まるのか?
まず理解すべきは、この言葉が「古着ビジネスは絶対に成功しない」という意味で語られているわけではない、ということです。 では、なぜこの言葉はこれほどまでに広まっているのでしょうか。
誰が、誰に向けて発信しているのか?
この強い警告の言葉は、主に、すでに古着ビジネスを経験した先輩たちや、業界を分析する情報サイトが、「古着転売を手軽な副業だ」と考えている、準備不足の初心者に向けて発信しているケースがほとんどです。 つまり、「安易に始めると、痛い目を見ますよ」という、ある種の親心や警鐘として機能しているのです。
その根拠は?「儲からない」を支える4つの構造的課題
では、なぜ「痛い目を見る」のでしょうか。 その背景には、古着ビジネスの「手軽さ」という魅力の裏に隠された、4つの厳しい現実があります。
- 隠された労働集約性(思ったより、ずっと大変)
「仕入れて、写真を撮って、出品するだけ」と思われがちですが、1点の商品を売れる状態にするには、採寸、撮影、商品説明文の作成、丁寧な状態確認など、膨大な手間と時間がかかります。1点に1時間かかることも珍しくありません。 - 厳しい利益構造(思ったより、儲けが薄い)
参入しやすい分、メルカリなどでは価格競争が激化しています。さらに、お客様からの値下げ交渉への対応や、年々高騰する送料が、あなたの利益をじわじわと圧迫します。 - 知識の壁(思ったように、売れない)
市場のトレンドや人気ブランドを知らなければ、仕入れた商品がすべて「売れない在庫(デッドストック)」になるリスクがあります。価値ある商品を見抜く「目利き」の力も必要です。 - 法的・物理的な障壁(思ったより、面倒くさい)
事業として行うには「古物商許可」の取得が必須ですし、オンラインで販売するには「特定商取引法」に基づき、個人情報を表示する義務もあります。また、増え続ける在庫を保管する物理的なスペースも、深刻な問題となります。
「儲からない」という言葉は、これらの厳しい現実を知らずに、幻想だけで飛び込んできてしまった人たちが直面する、必然的な結果を言い表しているのです。
一方で、市場は4兆円規模へ。古着ビジネスの「追い風」と「逆風」
前の章で解説した厳しい現実だけを見ると、「やっぱり古着屋は難しいビジネスなんだ」と感じてしまうかもしれません。
しかし、一歩引いて市場全体をマクロな視点で見ると、そこには強力な「追い風」が吹いていることも、また事実なのです。
追い風①:4兆円規模へと成長する巨大リユース市場
業界専門メディアである「リサイクル通信」が発表した調査によると、日本のリユース市場全体は2022年に2.9兆円に達し、さらに2030年には市場規模が4兆円に達すると予測されています。 この力強い市場の成長が、業界全体にとって非常に良好な事業環境を提供しており、新規参入者にとっても大きなチャンスとなります。
出典:リユース業界の市場規模推計2024(2023年版) – リサイクル通信
追い風②:サステナビリティへの関心と価値観の変化
「服を大切に、長く使う」というサステナブルな考え方は、もはや一部の人のものではありません。特に若年層を中心に、「古着を選ぶこと=環境に配慮した、賢くてクールな選択」という価値観が浸透しています。この意識の変化が、古着市場への追い風となっています。
追い風③:「他人と違う一点物」への欲求
ファストファッションが普及し、誰もが同じような服を手に入れられる時代だからこそ、逆に「他人とは違う、自分だけのスタイル」を求める人が増えています。歴史や物語を持つ「一点物」と出会える古着は、こうした自己表現の欲求を満たす、最高の選択肢なのです。
しかし、無視できない「逆風」も存在する
ただし、この有望な市場にも、無視できない厳しい現実、「逆風」が存在します。
その最大のものが、円安による輸入コストの高騰です。
特に、海外からの仕入れに依存する事業者にとって、近年の円安は深刻な問題です。業界専門メディア「リサイクル通信」が財務省の貿易統計を分析したレポートによると、古着の1キログラムあたりの輸入単価は、2020年の725円から2024年には1320円と、実に82%も急騰したと報じられています。
このコスト上昇は、利益率を直接圧迫します。この逆風に耐えうる、賢い仕入れ戦略と、価格を正当化できるだけの付加価値(ブランディング)がなければ、簡単に飲み込まれてしまうのです。
出典:「2024年1-12月 財務省貿易統計」古着の輸入量が増加 – リユース経済新聞
この「追い風」と「逆風」が同時に吹いているのが、今の古着ビジネスのリアルな姿です。 市場は成長しているが、競争も厳しく、コストも上がっている。 この複雑な海を乗りこなし、成功を掴むためには、一体どうすればいいのでしょうか。 次の章では、その具体的な戦略について見ていきましょう。
「転売ヤー」から「専門キュレーター」へ。成功する事業者の4つの共通戦略
厳しい市場環境の中でも、確かな成功を収めている事業者が数多く存在します。 彼らは、商品を右から左へ流す単なる「転売ヤー」ではありません。独自の価値を提供する「専門家(キュレーター)」です。
彼らに共通する4つの戦略的支柱を、具体的に見ていきましょう。
戦略①:仕入れの科学
成功しているオーナーは、行き当たりばったりで仕入れません。自分の店のコンセプトに基づき、「何を、どこから、どのように、どれぐらい、いくらで」仕入れるかという明確な戦略を持っています。
例えば、高価なヴィンテージ品は古物市場で、回転率の高いアパレル古着はオンラインのBtoBサイトで、というように、商材によって仕入れ先を使い分けることで、リスクを分散し、品揃えに深みを持たせています。中でも、オンラインで完結するBtoBのマーケットプレイス、例えば「SMASELL(スマセル)」のようなプラットフォームを活用すれば、日本全国のサプライヤーから、効率的に商品を仕入れることが可能です。
本ブログでも下記の記事を紹介しております。
- コストを抑えた仕入れを追求するなら
【完全版】古着「100円仕入れ」の教科書|プロが教える倉庫・メルカリ活用術から”闇”の回避法まで
- プロの仕入れルートに必須の古物商許可については
メルカリ販売に古物商許可は必要?【完全ガイド】あなたの活動が対象か分かる診断チャート付き
- そして高価なブランド品の真贋を見抜くスキルは
【プロ直伝】ブランド転売の真贋鑑定ガイド|偽物を見分ける5つの方法と、信頼を築く仕入れ・販売術
こうした知識を組み合わせ、多様な供給ルートを確保することがビジネスの安定基盤となります。
戦略②:世界観の構築
飽和した市場で価格競争に陥らないために、成功者は明確なブランドアイデンティティを構築します。 「70年代アメリカンヴィンテージ専門」「ヨーロッパのデザイナーズ古着専門」のように、特定のニッチに特化することで、熱心なファンを獲得します。 彼らが売っているのは、服そのものではなく、独自の審美眼で選び抜かれた「世界観」であり、お客様はその物語に共感してファンになるのです。
戦略③:デジタルでの発信力
オンラインが主戦場の今、成功者はデジタルツールを戦略的に使いこなします。 ただ商品を並べるだけでなく、InstagramやTikTokでコーディネート提案やブランドの背景にあるストーリーを発信し、フォロワーとのコミュニティを築きます。 「いいね」やコメントを通じて顧客との信頼関係を深め、一度きりの購入客を熱心なリピーターに変えていくのです。
戦略④:効率的な業務運営
センスや情熱だけでは事業は続きません。成功している方は、データに基づいた意思決定を行っています。 何が売れ、何が利益をもたらしているのかを客観的に分析し、次の戦略に活かします。また、個人の労働力の限界を理解し、写真撮影や発送業務などを戦略的に外部委託(アウトソーシング)することも視野に入れ、自身は仕入れやブランド構築といった、より付加価値の高い活動に集中します。
あなたの戦場はどこ?ビジネスモデル別メリット・デメリット比較
優れた戦略も、戦う場所(ビジネスモデル)を間違えれば意味がありません。あなたのスキル、資金、そして目標に最適な「戦場」はどこなのか。主要なビジネスモデルのメリット・デメリットを比較し、考えてみましょう。
実店舗(体験価値とコミュニティ)
- メリット: お客様が商品を直接手に取って試せるため、信頼を得やすい。内装や音楽などを通じて、独自の「世界観」を深く印象付けることができる。
- デメリット: 400万〜600万円という高額な初期投資と、家賃や人件費といった重い固定費が最大の障壁。商圏が地理的に限定される。
独自ECサイト(ブランド構築の王道)
- メリット: サイトデザインや見せ方を完全にコントロールでき、独自のブランド体験を構築できる。プラットフォーム手数料に縛られず、顧客リストも直接管理できる。
- デメリット: サイトへの訪問者を自力で集める「集客」が必須。SEOやSNS、広告の専門知識とコストが必要。
CtoCマーケットプレイス(手軽さと物量作戦)
- メリット: メルカリなど、巨大なプラットフォームの集客力に最初からアクセスできる。スマホ一つで手軽に始められる。
- デメリット: 激しい価格競争に陥りやすい。ブランドの差別化が難しく、手数料や規約にも縛られる。
新興モデル(フランチャイズ・無人店舗)
- メリット: 本部のサポートや確立されたビジネスモデルを利用できるため、未経験でもリスクを低減できる。無人店舗は人件費を劇的に削減できる。
- デメリット: 経営の自由度が低く、ロイヤリティの支払いが発生する。盗難リスクなど、運営上の特殊な課題がある。
【ビジネスモデル比較まとめ】
モデル | 初期投資 | 運営コスト | ブランディング | 市場リーチ | 成功の鍵 |
実店舗 | 高 | 高 | 非常に高い | 限定的 | 立地選定、接客 |
独自EC | 低~中 | 中(広告費) | 高い | グローバル | 集客力、ブランド構築 |
CtoC | 非常に低い | 低(手数料) | 低い | 非常に高い | 価格競争力、大量処理 |
フランチャイズ等 | 中~高 | 中(ロイヤリティ) | 限定的 | 中 | 本部との連携、システム遵守 |
この分析が示すのは、「儲からない」という問題が、しばしば選択したモデルと、あなた自身のスキルやリソースとのミスマッチから生まれるという事実です。
例えば、メルカリを主戦場に選ぶということは、「価格」と「物量」での厳しい競争に参加することを意味します。そこでの課題は、いかに効率的に大量の作業をこなし、その他大勢の出品者の中で埋もれないようにするか、です。 一方、下北沢に実店舗を構えるということは、「顧客体験」と「コミュニティ作り」で勝負することを意味します。ここでの課題は、高い固定費を賄うための集客力と、お客様をファンにする接客術なのです。
どの戦場を選ぶかが、あなたが向き合うべき挑戦と、手にするチャンスをあらかじめ規定します。自分の強みを活かせる戦場を選ぶことこそ、成功への最初の、そして最も重要な戦略的決断と言えるでしょう。
まとめ:「儲からない」理由の裏に、成功へのヒントがある
今回は、「古着屋は儲からない」という言葉の真偽について、市場データや多くの事業者の声をもとに、その本質を解き明かしてきました。
この記事を通じて見えてきたのは、多くの人が「儲からない」と嘆く、その理由の裏側にこそ、成功への「ToDoリスト」が隠されているという事実です。
「仕入れが難しい」と言うなら、私たちは複数のルートを開拓し、専門知識を磨けばいい。 「価格競争が厳しい」と言うなら、私たちは独自のコンセプトで世界観を築き、ファンを作ればいい。 「作業が大変だ」と言うなら、私たちは業務を効率化し、データで戦略を立てればいい。
彼らが失敗した「落とし穴」の場所が分かれば、そこを避けて進むだけで、成功への道筋は自ずと見えてきます。 「儲からない」という言葉は、もはやあなたにとって、ビジネスを諦める理由にはなりません。
この記事で得た「設計図」を手に、あなたはもう「古着屋は儲からない」という言葉に惑わされることはないはずです。自信を持って、あなたが「専門キュレーター」として、自分のブランドを多くの人に喜ばれるビジネスへと育てていっていただければ嬉しい限りです。
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