インタビュー/企画

環境省「ファッションと環境」タスクフォースメンバー×ウィファブリック代表福屋 対談

「ファッション抜きに​日本のカーボンニュートラルを2050年までに実現することはできない」という小泉進次郎環境大臣の発言通り、ファッション産業は環境への負荷が大きいと指摘され続けてきました。

2020年9月、環境省はサステナィブルなファッション産業を実現すべく「ファッションと環境」タスクフォースを結成。環境への負荷を軽減するために、消費者、国内企業、自治体、国などがどのような対応策をとるべきかを、具体的な数値とともに公表しています。

今回は立ち上げメンバーである岡野様、鎌倉様にインタビュー。発足に至るまでの経緯から、ファッション産業の現状、具体的な活動内容までお伺いしました。

身近なファッションを切り口に

左:弊社代表 福屋  中:環境省 岡野様 右:環境省 鎌倉様

福屋:
タスクフォースはどのような経緯で発足したのですか?

岡野様:
2年前にファッションレボリューション※のイベントで登壇した際に、SDGsを軸に色々なことをお話しさせて頂きました。その際、驚いたことに席には若い人が多く座っており、ファッションに関してもたくさんの質問をお寄せ頂いたんです。

組織内でも、ファッションを通して環境のために何かできる取り組みはないかという話になり、ファッション誌主催のイベントや、タレントとのトークイベントなどにも環境省として積極的に参加してきました。

その後、新型コロナウイルス感染拡大を受け、アパレル企業でも売上が低迷する中、「ファッションをサスティナブルに変えることが重要では?」という想いが益々強くなりました。ちょうど環境省で勤務時間の20%までを担当業務以外の活動に充てられる「霞が関版20%ルール」ができたので、この制度を活用してファッションについて勉強しようということになり、22名の有志メンバーにてタスクフォース結成に至りました。

福屋:
なぜファッションを切り口に選んだのですか?

岡野様:
環境省はそもそも、地球環境の問題、水の問題、生物の問題など、様々な部署があるのですが、例えば「絶滅危惧種を守りましょう」と言っても、多くの方にとってはピンとこず、自分ごととして何をしたらいいのかイメージしにくい。それなら、みなさんが日頃の生活の中で向き合っているファッションを切り口にすれば、より身近に感じ、アクションに繋がりやすいのではないかと思ったんです。

また、ファッションは自分の考え方や個性を表現する場。Tシャツの値段も300円から1万円以上のものまであり、そこには既に見えない価値が乗っているんです。ですので、サスティナビリティも価値として乗せやすいのではないかと感じました。

鎌倉様:
服はみんなが毎日着るもので、ファッションはとても身近な存在。私自身、大学時代に周りの一部がファストファッションを購入し、すぐ捨ててしまうというサイクルを見てモヤっとしていた時期もあり、このタスクフォースに参画しました。身近なファッションが、みなさんが環境問題について考えるきっかけになれば嬉しいですね。

※ファッションレボリューションとは:2013年4月24日、バンクグラテデシュで起こった縫製工場の崩落事故をきっかけに発足。自分たちの衣服の生産に従事している人たちの労働環境や彼らに適正な賃金が払われているかを訴えるアクション。

サイト公開から勉強会まで幅広く活動

福屋:
現在の具体的な活動内容について教えて下さい。

岡野様:
ファッションと環境の調査、その成果をまとめたSUSTAINABLE FASHIONサイト※ の公開をはじめ、小泉大臣と企業との意見交換会、企業さんとの勉強会、イベントなどへの登壇も行っています。勉強会は、繊維から製造、販売までの流れに伴ったそれぞれのサスティナブルへの取り組みや共通課題について議論するなど、とても有意義なものとなり、これを継続するためのコンソーシアム設立も決まりました。今後もコラボレーションできる場を持ち続けたいですね。

※ 環境省 SUSTAINABLE FASHIONサイト
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

適量生産・適量購入・循環利用を推奨

福屋:
タスクフォースの活動を通じて、気づいたことはありましたか?

岡野様:
まず、国内でもCO2削減などの取り組みが想像以上に進んでいることに気づきました。
一方、製造工程について調べていくうちに、このままではアパレル産業自体も持続していくのは難しいのではないかと思うようにもなりました。供給量は増加しているにも関わらず、人口は減少しています。価格も以前に比べ下がっている。海外での製造が増え、国内の縫製工場が廃業していっているのが現状。産業自体が衰退していっているんです。「これって誰が得してるんだろう?」と考えずにはいられませんね。

福屋:
アパレル産業を持続可能なものにするために、具体的にはどうすればいいとお考えですか?

岡野様:
「大量生産・大量消費・大量廃棄」ではなく「適量生産、適量購入、循環利用」が大切。まずは生産量をコントロールし、適正な価格で販売する必要があります。そうすることで生産する方の暮らしも守ることができます。購入後はなるべく長く大切に着用頂き、リユース(再利用)という選択肢ももっと広まるといいですね。

福屋:
最近ファストファッション業界では「こういうサスティナブルな作り方をしているから大量に作らせてほしい」という逆説的な「サスティナブル」も存在しているようです。ですので「サスティナブルファッション」というワード自体が今後どういった意味を持つものになっていくかも重要だなと思いますし、自分たちでもその意味と役割を考え続けたいですね。

また、業界一丸となって自分たちができることから先ず進めることも大事だと思っています。行政の方が、このように真剣に考えてくださっていて、実際に動いてくださっているというのは、国としても一体感が生まれとても心強いです。

 

新たな価値を作るスマセルの取り組み

福屋:
SMASELL(スマセル)※1 の取組みについてもご意見をいただけますか?

岡野様:
タスクフォースに参画する前までは、バーバリー問題※2 の他に、NGO団体の取り組みくらいしか知らない状況でした。

イベントで福屋さんがSMASELL(スマセル)について話されているのを聞き、事業として具体的に取り組んでいる企業があることに驚きました。単なる滞留在庫の販売ではなく、そこに新たな価値を作ろうとしていることが、とても面白いなと感じましたね。

タスクフォース参画後、アンケートをお願いしても、なかなか答えていただけない現状を知りました。業界内での信頼関係がないとビジネスとして成り立たないこともありますし。

そんな中でこういったアパレル業界が抱える環境課題に事業として取り組まれていることの大変さをリアルに感じ、すごいなと思いました。

こういった中、事業へ賛同してもらうことは容易じゃなかったのではと感じましたが、どのようにSMASELL(スマセル)への出品を提案されてきたのですか?

福屋:
最初はとにかく寄付や環境設計のような会社様など、滞留在庫の焼却処分以外の選択肢を数多く提案してきました。その中で、「ブランド毀損することなくできるだけ高く販売できる場」が提供できれば、少しでも多くの廃棄をなくせるのではと感じ、オンライン上での会員限定サイトという形でSMASELL(スマセル)をリリースしたんです。

今後、弊社の考えに賛同し、共にサスティナブルファッションを目指し取り組む企業が増えてくれると嬉しいですね。

 

※1 弊社が運営する、ファッションを楽しみながら持続可能な社会実現を目指すサスティナブルアウトレットモールサイト。

※2 2018年、英高級ブランド「バーバリー」が、約41億円相当の衣料品やアクセサリー・香水など売れ残り商品を廃棄していたことが判明。

 

 

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